スキンケア商品などの広告や口コミなどで「ブースター」というワードをよく耳にするかと思います。
しかし、ブースターと言われてもどの様なものなのか分からない方も多いかと思います。 その他の言い方としては「導入液」や「導入美容液」とも呼ばれているブースターですが、この表現は薬機法的にはどのように解釈されているのでしょうか。
今回の記事ではスキンケアにおける「ブースター」表現についてご説明したいと思います。
薬機法における化粧品・医薬部外品の効能効果
まず、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「医薬品医療機器等法(薬機法)」における化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)についての効能効果は施行当時から大きな変更が行われておらず、スキンケア用品で標榜可能な効能効果は全56項目のうち、下記とされています。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。 (18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。 (19)肌を整える。 (20)肌のキメを整える。 (21)皮膚をすこやかに保つ。 (22)肌荒れを防ぐ。 (23)肌をひきしめる。 (24)皮膚にうるおいを与える。 (25)皮膚の水分、油分を補い保つ。 (26)皮膚の柔軟性を保つ。 (27)皮膚を保護する。 (28)皮膚の乾燥を防ぐ。 (29)肌を柔らげる。 (30)肌にはりを与える。 (31)肌にツヤを与える。 (32)肌を滑らかにする。 (33)ひげを剃りやすくする。 (34)ひがそり後の肌を整える。
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。
ブースターや導入と聞くと「お手入れ前に使うと効果がアップしそう」「その後に使う化粧水がもっと肌に入りそう」のようなイメージを持たれる方も多いかと思いますが、薬機法における広告の基準となる「医薬品等適正広告基準」の中では次のように記されています。
3 効能効果、性能及び安全性関係 (1)承認等を要する医薬品等についての効能効果等の表現の範囲承認等を要する医薬品等の効能効果又は性能(以下「効能効果等」という。) についての表現は、明示的又は暗示的であるか否かにかかわらず承認等を受けた効能効果等の範囲をこえてはならない。
(6)医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の同一紙面での広告について医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品を同一紙面又はテレビ等で同時に広告を行う場合には、相互に相乗効果を得るような誤解を招く広告又は科学的根拠に基づかず併用を促すような広告(医薬品及び指定医薬部外品に限る。)は行わないこと。 なお、医薬部外品については、「医薬部外品」である旨(新指定及び新範囲医薬部外品の場合は「指定医薬部外品」の旨)を明記すること。
つまり、医薬品等においては承認等を受けた効能効果等の範囲を超えるような訴求であったり、相互に相乗効果を得るような誤解を招く広告は禁止されいます。 ただ、ここに記載されている「医薬品等」には化粧品や医薬部外品も含まれるものの、「医薬品及び指定医薬部外品に限る。」とも記載されているため、実際のところ内容としては不明瞭なものとなっています。
ここで改めて化粧品の定義について振り返ってみたいと思います。 薬機法では化粧品とは
人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
と記されています。
「人体に対する作用が緩和なもの」と記載されていることから、化粧品の効能効果を高める様ないわゆる薬理的な作用を持つものではないと考えられます。
これらのことから、化粧品において、他の化粧品の効能効果を高めるような表現については、薬理効果を想起させるような内容の場合は認められない可能性が考えられます。
広告における「ブースター」表現の考え方
それでは、薬機法に抵触しない範囲で「ブースター」やそれに類する表現は可能なのでしょうか。 結論からお伝えしますと、不可能ではないが注意が必要であると考えられます。 ここでは主に注意しなければならないポイントをご説明したいと思います。
化粧品の効能効果を逸脱しない、想起させないようにすること
例えば、ブースターや導入などのワードを使うと、表現方法によっては肌そのものの状態を高める様なイメージを消費者に与えてしまう恐れがあります。ブースターや導入の前後関係の表現やイメージも踏まえて、化粧品の効能効果の範囲内に収まるような表現をする必要があると考えられます。
他の化粧品との薬理的な相乗効果を標榜しないこと
先述の通り、基本的に他の化粧品の効能効果を高める様な薬理効果的な表現は認められない場合があります。 例えば、「この美容液を最初に使うことで、この美白乳液の美白効果をより一層高めます」のような表現をしてしまった場合、認められない可能性が高いと考えられます。 しかしながら併用の推奨についてはある程度認められていると考えられているため、「お手入れのファーストステップにこの美容液で肌を整え、続いてこの美白乳液を肌に馴染ませます」といった使用方法の推奨での表現は可能と考えられます。 また、「次に使う化粧品が馴染みやすい肌に整える」「角質層への浸透をサポート」という表現であればある程度は訴求可能と考えられます。
浸透は角質層を超えないようにすること
ブースターや導入と聞くと、どうしても「潤いがより一層肌に浸透していきそう」とイメージしてしまいます。 しかしながら、日本化粧品工業連合会が公開する「化粧品等の適正広告ガイドライン2020年版(第2刷)」には下記の記載がなされています。
E3「肌・毛髪への浸透」等の作用部位の表現 浸透等の表現は、化粧品の効能効果の発現が確実であるかのような暗示、及び効能効果の範囲を逸脱した効果を暗示するおそれがあるため、原則として行わないこと。 ただし、作用部位が角質層であることを明記した場合であって、かつ、広告全体の印象から効能効果の保証や効能効果の範囲の逸脱に該当するものでない場合に限って表現することができる。 なお、医薬部外品の有効成分の浸透等の表現を行う場合は、事実に基づき、承認を受けた効能効果の範囲を逸脱しないこと。 ①「肌への浸透」等の表現 「肌への浸透」の表現は「角質層」の範囲内であること。 [表現できる例] 「角質層へ浸透」、「角質層のすみずみへ」 [表現できない例] 「肌へ浸透」(「角質層」の範囲内であることが明記されていない) 「肌内部のいくつもの層* *角質層」、「肌*の奥深く *角質層」 (注釈で「角質層」とあっても「肌内部」「肌の奥深く」という表現は、角質層の範囲を越えて浸透する印象を与えるため不適切) 「肌の内側(角質層)から・・・」(医薬品的)
つまり、肌への「浸透」を表現する場合は、必ず「角質層まで」である旨を明記する必要があります。 また、この角質層は厚さ0.01〜0.03mmの極めて薄い層となるため、「肌の奥深く」「肌内部」のような表現についても、角質層を越えるような表現とみなされてしまうため表現できないとされています。 「この導入美容液は次に使う化粧水の浸透をサポートします」といった表現をする際は、「浸透」に対して「角質層まで」という内容を明瞭に記載する必要があります。
化粧品の浸透表現に関しては別の記事で更に詳しくご説明しているので、是非参考にしてみてください。
まとめ
今回は美容液などに見られる「ブースター」や「導入」に関する表現方法についてご説明させていただきました。
スキンケア商品などはシリーズ展開しているものも多く、ライン使いをすることでより充実したお手入れ時間を提供できるものと考えられます。そのため、相乗効果を想起する様な表現については十分注意したいところです。
スキンケア商品において、「ブースター」や「導入」の表現でご検討されている方は、是非この記事を参考にしてみてください。