広告制作をするにあたって、「メタボ」「コレステロール」は表現できるでしょうか。
メタボ(メタボリックシンドローム)とは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態を指します。腹囲だけで図るものではありません。 またメタボの診断指標の基準の一つにあるLDLコレステロールは、動脈硬化の進行と関わることもあるため、メタボと合わせて健康に気をつけている方には男女ともになじみのある言葉です。
今回の記事では、 「メタボ」「コレステロール」は広告表現において、薬機法上表現できるのか、健康食品、機器・雑貨に分けて考え進めていきます。 お客様により届きやすい広告制作のために、言い換え表現なども紹介しています。どう表現すればいいのか迷った時の参考にしてみてください。
薬機法とは
正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。間違った情報や認識により、身体に与える影響が大きいため法律で厳しく定められています。 医薬品や医薬部外品、化粧品や医療機器に関する品質・有効性・安全性を確保するための法律です。対象となるのは下記のとおりです。
- 医薬品(風邪薬、鼻炎薬など)
- 医薬部外品(うがい薬、日焼け止めなど)
- 化粧品(コスメ、シャンプーなど)
- 医療機器(家庭用マッサージ器など)
- 再生医療等製品
景品表示法とは
正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。 商品やサービスの取引に関連する不当な表示を禁止しています。一般消費者の利益を保護することを目的としています。実際のものよりも「すごくいい!」と思わせてしまう「優良誤認」、実際よりも「すごくお買い得!」と思わせてしまう「有利誤認」などが不当表示にあたります。
健康増進法とは
健康増進法は国民保健の向上をはかることを目的とした法律です。広告と健康増進法も無関係ではありません。健康食品の広告を扱う場合には忘れてはいけない大切な法律です。
第六十五条 何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
出典:健康増進法
健康増進法に違反する場合となるのは下記の条件を満たした場合です。
- 広告とみなされること
- 健康保持増進効果であること
- 表現内容が誤解を招く表現であること
広告の定義は3つの要素から成り立っています。1998年9月29日付厚生省医薬安全局監視指導課長通知により、広告の3要素が提示されています。いずれの要件も満たす場合は広告とみなされます。
- 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること。
- 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること。
- 一般人が認知できる状態であること。
健康増進法にかかる広告表現についても、虚偽誇大な表現は認められていません。「これを飲むだけで〇〇が改善される」といった表現などは健康増進法の観点からもおすすめできません。
参考:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について – 消費者庁
健康食品は薬機法の範囲外?
健康食品については、実は薬機法の対象ではありません。ですが、広告で表現する際にその効果が医薬品的な効果を示していると、無承認無許可医薬品という扱いとなって薬機法違反となりますので注意が必要です。 つまり「医薬品」と誤解されるような表現が薬機法違法になります。あくまでも、健康食品は、健康を維持するための食品であるということを念頭において広告制作をすると良いと思います。
健康食品の「メタボ」「コレステロール」広告表現で言える?言えない?
健康食品で「メタボ」「コレステロール」について、その対象が「トクホ」もしくは「機能性表示食品」であるか、一般的な健康食品であるかで表現できる範囲が変わります。
一般的な健康食品では言えない
一般的な健康食品では表現することはできません。 薬機法上も景品表示法も健康増進法にも抵触する可能性が高いです。 身体の構造機能に影響を及ぼすような広告表現は、医薬品的な効能効果の標ぼうとみなされ、医薬品医療機器等法第68条(承認前の医薬品の広告の禁止)に抵触するおそれがあります。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
トクホと機能性表示食品では可能
トクホと機能性表示食品では「コレステロールの吸収を抑える」と表示することが可能です。トクホと機能性表示食品では、科学的根拠に基づいていると国が定めている機能を表示することが可能だからです。
トクホ(特定保健用食品)とは
特定保健用食品は、からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品です。 特定保健用食品として販売するには、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。(健康増進法第43条第1項)
機能性表示食品とは
機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。 特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります。
トクホと機能性表示食品のいずれでも「コレステロールの吸収を抑える」という機能性の表示が認められています。
健康食品での違反事例
健康食品の広告で、使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(メタボ予備軍の方へ、メタボ健診が気になる方へ、コレステロールが気になる方へ、LDLコレステロール、悪玉コレステロール)
- 身体の変化についての表現(メタボ改善、メタボ消滅、コレステロール値改善)
- 特定部位を表す表現(おなか、内臓脂肪、腹部)
- 症状や病名の記載(メタボ、メタボリックシンドローム、)
- 用法用量の指定(夕食後にお召し上がりください、1回1粒でOK)
- 行政機関が認めたような表現(厚生労働省が認めた、〇〇研究所推薦)
健康食品広告での使用が認められる表現
健康食品の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(健康のために、体の中から元気に、健康の維持のために)
- 使用感の表現(飲みやすい、続けられる、香りがいい)
健康食品広告での言い換え表現例(参考)
健康食品の広告で、「メタボ」「コレステロール」に関する表現についてまとめました。広告制作の際の参考にしてみてください。
メタボ、コレステロールに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:メタボ対策に
OK:いつまでも若々しい毎日でいたい
NG:コレステロールを下げる
OK:健康で毎日元気に過ごせる
機器、雑貨での違反事例
メタボ関連の雑貨としては、お腹周りのダイエットに絡める健康器具などが挙げられます。機器・雑貨でも「メタボ」や「コレステロールが気になる方へ」などの広告表現はできません。 機器や雑貨の広告での使用が認められない表現方法やワードには次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(メタボに効果、メタボ解消)
- 身体の変化についての表現(メタボ改善、メタボ対策、メタボに作用、コレステロールの数値をさげる)
- 症状や病名の記載(メタボ、メタボリックシンドローム、中性脂肪)
- その製品を使うだけで良いといった表現(付けるだけで瘦せる、履くだけで細くなる)
- 最大級表現(最高、最小、最大、最上級、高級)
- 安全性の保証(安全、無害、無毒、疲れない)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師推薦、教授監修)
機器、雑貨広告での使用が認められる表現
機器や雑貨の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(健康のために、運動をサポート)
- 使用感の表現(使いやすい、操作性が良い、コンパクトで持ち運びしやすい、使うと気持ちが良い)
機器、雑貨の広告での言い換え表現(参考)
機器・雑貨の広告制作で、メタボに関連する表現についてまとめました。広告制作の際の参考にしてみてください。
メタボに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:メタボで気になるおなかに
OK:お腹周りの運動に
NG:メタボ対策に
OK:運動不足の方におすすめ
まとめ
メタボやコレステロールについては、医療的効果があると捉えられる可能性がありますので、広告において表現するのはさけたほうがよいでしょう。トクホや機能性表示食品であれば許可された範囲内の表示内容でしたら、表現可能です。 言い換え表現を用いて運動と絡めるなど、健康の維持をサポートする訴求で広告表現の参考にしてみてください。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。