化粧品には使用時に混ぜ合わせるものや、併用可能なものがあります。
化粧品の混ぜ合わせには、どのような基準や規制があるのか、自社の化粧品を混ぜ合わせて使用することを広告してもいいのか悩まれる方もいると思います。
そこでこの記事では、化粧品の混ぜ合わせについて解説します。
混ぜ合わせ前提の化粧品、用時調整型化粧品について
用時調整型化粧品は、消費者が使用時に混ぜてから使う化粧品のことを指します。
用時調整型化粧品はどのような化粧品?
化粧品の中には、混合した状態では時間の経過とともに分離や沈殿を生じてしまったり、成分の効果がなくなってしまったりする製品が存在します。
このような時間とともに性質が劣化する経日安定性が良くない製品では、使用する時に消費者の手で混合することを前提とした商品設計とすることがあります。
薬機法違反にならない?
用時調整型化粧品は、薬事法では製造販売業者の責任のもと、混合しても安全性や安定性に問題がないことを担保すれば製造や販売が認められます。
「リンスのような使用時に水で希釈して用いる製品」、「使用時に混ぜて使用する同類別で同一販売名(同一基幹名)であるメーキャップ化粧品等」及び「経日安定性を保持するため、使用時に混合して用いる用法の化粧品」については、「「使用時に混合して用いる用法」の化粧品の許可申請について」(昭和 61 年 12 月 25 日付け厚生省薬務局審査第二課化粧品審査室事務連絡)
において原則として認められています。
混ぜ合わせることが可能といっても、何でもかんでも混ぜていいわけではありません。混ぜることの正当性を認められるものでないといけません。
医薬部外品は消費者が用事調整する処方について承認も必要となります。
用時調整の必要性、安全性に関するデータや誤用防止対策、処方の承認などが正しくおこなわれていれば、用時調整型化粧品として販売することができます。
間違いを防ぐ対策は?
混合時に消費者が間違えることがなく、正しく用時調整できるように、混合前のアイテムをセットにして一つの製品とするケースが一般的です。
また、使用方法について消費者に注意を促す広告表示が必要です。
- 別容器のローションとパウダーをセットにして、お手入れ時にローションにパウダーを混ぜてから塗布する製品
- アンプルと混合用の瓶がセットになっていて、混合用の瓶にアンプルの中身を入れて混合して化粧水をつくる製品
- ディスペンサーに専用のボトルをセットして、自動で混合された美容液がでてくる製品
- カラーリング剤の1剤と2剤のセット
といったものがあります。
製品の混合は薬機法の製造違反のおそれ
異なる化粧品を混ぜるということは、薬事法の製造行為に該当します。
製造業の許可
薬機法では以下のように定められています。
“法第13条第1項
医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の製造業の許可を受けた者でなければ、それぞれ、業として、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の製造をしてはならない。”
製造業の許可を持たない個人や法人が、製品同士を混ぜた場合、新たな組成の別の製品を造ったことになり、薬機法違反に該当してしまいます。
「業として」とあるので個人で使用する分には自由です。しかし、他者に使用したり譲ったりすると薬機法違反になります。
違反になる例
このような例は薬機法違反になります。
- 美容サロンでの混合
パーマ剤にPPTなどの化粧品を混ぜることは違反です。
異なるカラーリング剤同士を混ぜてニュアンスのある髪色にする施術もよくおこなわれていますが、薬機法違反になります。
違反にならない例
以下のような場合は違反にはなりません。
- 消費者の個人判断
基本的に、混合する使用方法が記載されていない製品同士を混合してはいけません。
ただし、消費者が個人の責任で使用時に異なる製品を混ぜ合わせて、自分に使用した場合は問題ありません。
- 順次使用
メーキャップ化粧品や基礎化粧品は異なる製造販売業者のものを重ねて塗ることがあります。
これらは併用ではなく「順次使用」となるため、違反にはなりません。
特別な事由がない限り、消費者に注意を促したりする必要もありません。
医薬品との併用
肌につける化粧品では、湿疹などが合った場合に外用薬(塗り薬)と併用する場合も出てきます。
外用薬と化粧品は併用できるのでしょうか?
この場合併用は「可能」です。
皮膚科でも、ステロイド外用薬と保湿剤が同時に出されるのはよくあることですので、併用することができます。(医師・薬剤師に相談の上で併用することが望ましい)
塗る順番を気にする人も多いですが、特に決まりはありません。
メイクもOKです。メイクの場合は外用薬を塗った後にメイクをします。
化粧品の併用と混合に関わる広告表示
化粧品の併用はジャンルでいえば用法用量に関する問題です。
化粧品は組み合わせて使うことも多いため、どのような場合が違反になるのか気になるところです。
併用に関する広告表示
一般的に化粧品の併用に関する表現は認められていません。
ただし、承認等により併用を認められた医薬品等及び化粧品(用時調整型化粧品)を除きます。
なお、「化粧品などを順次使用することの表現は差し支えない」となっていますので、「洗顔後の肌にお使いください」「お手入れの最後に」といった順番を示す表現は可能です。
異なる化粧品の混合
異なる製品の混合を製品に製品の直接の容器、外箱等に明記していいのでしょうか。
同一製造販売業者による「製造販売届出を行った化粧品A」と「製造販売届出を行った化粧品B」 がある場合、AとBとを使用時に混合して用いる用法を記載してもよいのでしょうか?
答えは「よい」です。
ただし、製造販売業者の責任のもとに、混合しても安全性や安定性に問題がないことを担保した上でなければなりません。
混合して使用した際の安全性を示すデータを収集しておくことで、トラブル防止に繋がります。
このときの注意点は、消費者が他のどの製品と混合して用いてもよいと受け取られるような記載をしないことです。
この場合はAとBの2つの製品の混合ができるということです。
ほかの製品同士の組み合わせは、混ぜたときの安全性や安定性の担保ができないので、混合できません。
どのような混ぜ合わせでも構わないと誤解される表現をしてトラブルが起こった場合、広告表示の違反の恐れが出てきます。
製造販売業者A社のコラーゲン美容液Xと、製造販売業者B社の生コラーゲン化粧品Yを混ぜることを勧めてよいのでしょうか?
製造販売業者が異なる場合は「不可」です。
混ぜた場合の安全性・安定性についてA社・B社どちらが担保するのか不明だからです。
仮にA社が「我社が担保する」と申し出ても、B社の製品情報すべてを把握できるわけではないので、混ぜることはできません。
併用に関わる広告表現
化粧水と併用する化粧品の広告表示には注意が必要です。
1. そのままつけても、普段使っている化粧水に混ぜて使ってもOKです。
2. 普段は化粧水と一緒にお使いになることをおすすめします。
似たような表現ですが、1の場合は「不可」、2の場合は「可」になります。
この場合の判断基準は「混ぜる」の表現が、当該製品の本来の効能効果や安全性とは異なる認識を消費者に与えることがポイントです。
まとめ
化粧品の混ぜ合わせや併用は、用時調整型化粧品など、安全性が認められた製品以外は禁止されています。
消費者に誤解を与えるような表現をしないように注意しましょう。
この記事を参考にして良い化粧品をつくってください。