商標登録は、ブランド名や会社名、商品名を守るといった役割があるため化粧品ブランドを設立するときには商標登録の出願が必須となります。しかし、商標の作り方や商標の登録方法、どの区分の商標を取得すれば良いのか分からずに悩む人は多いようです。 化粧品ブランドの設立を検討している人は、本記事を参考に化粧品ブランドにとって商標登録が重要である理由や出願の際の注意点について確認しておきましょう。
商標とは
商標とは、事業者が自社の取り扱う商品やサービスを他社のものと区別するために使用するマークやネーミングのことです。 商標は商品やサービスを選ぶ目印であり、ブランドのイメージを決定する顔のようなものといえます。
商標登録されると商標権が発生し、他社や第三者は原則としてその商標を使用することが認められません。商標は知的創作物に対する財産権である「知的所有権」とひとつに数えられているのです。
化粧品ブランドに商標登録は欠かせない
化粧品は商標登録する必要性がもっとも高い商品ともいわれています。化粧品の商品名はどうしても他と似通ってしまいやすいため、商標登録する必要性が非常に高いと考えられているのです。 他社との商標トラブルを避けるために、化粧品ブランドの設立や新しい商品名を決める前には必ず商標について調査しておきましょう。
商標の区分と指定役務
商標登録を行う際には、商標の区分と指定役務を決めて出願を行うことが必要です。
商標は全部で45種の区分に分けられており、1区分出願ごとに費用が発生します。また、区分内で商品やサービスの詳細を指定する必要があり、これは指定役務と呼ばれます。指定役務はいくつ設定しても追加の費用は発生しません。 例えば、石鹸とシャンプーの両方で商標を取得したい場合は同じ3類内での区分になるため1区分の料金がかかりますが、染料とシャンプーの両方で商標を取得したい場合は2類と3類の区分の商標取得になるため2区分の料金がかかるという仕組みです。
各区分と、主な指定役務は次の通りです。商標取得を検討している製品がどの区分に当てはまるかチェックしておきましょう。
- 1類:化学品(指定役務:肥料、人工甘味料など)
- 2類:塗料(指定役務:染料、絵具など)
- 3類:化粧品(指定役務:石鹸類、口紅など)
- 4類:燃料(指定役務:ろうそく、固形潤滑剤など)
- 5類:薬剤(指定役務:医療用内服薬、サプリメントなど)
- 6類:卑金属(指定役務:鉄及び銅など)
- 7類:加工機械(指定役務:金属加工機械器具、化学機械器具など)
- 8類:工具(指定役務:ピンセット、電気アイロンなど)
- 9類:機械器具(指定役務:電池、電線及びケーブルなど)
- 10類:医療用機械器具(指定役務:医療用手袋、家庭用電気マッサージ器など)
- 11類:照明装置(指定役務:照明器具、エアコンなど)
- 12類:乗り物(指定役務:自動車、乗り物用の部品など)
- 13類:火器(指定役務:花火、護身用スプレーなど)
- 14類:貴金属(指定役務:宝石、腕時計など)
- 15類:楽器(指定役務:ピアノ、楽譜台など)
- 16類:紙製品(指定役務:コピー用紙、文房具など)
- 17類:材料(指定役務:プラスチックフィルム、絶縁手袋など)
- 18類:革製品(指定役務:かばん、化粧ポーチなど)
- 19類:建築材料(指定役務:セメント、木材など)
- 20類:家具(指定役務:ベッド、マットレスなど)
- 21類:家庭用品(指定役務:化粧用具、スポンジなど)
- 22類:繊維材料(指定役務:ロープ、ハンモックなど)
- 23類:糸(指定役務:毛糸、刺繡糸など)
- 24類:織物(指定役務:カーテン、枕カバーなど)
- 25類:被服(指定役務:洋服、靴など)
- 26類:裁縫用品(指定役務:ヘアバンド、髪留め)
- 27類:床敷物(指定役務:絨毯、マットなど)
- 28類:遊戯用具(指定役務:おもちゃ、ボードゲームなど)
- 29類:動物性食品(指定役務:肉類、牛乳など)
- 30類:植物性食品(指定役務:砂糖、麺類など)
- 31類:動植物(指定役務:花、野菜など)
- 32類:飲料、ビール(指定役務:ジュース、ビールなど)
- 33類:アルコール(指定役務:日本酒、みりんなど)
- 34類:たばこ(指定役務:たばこ、灰皿など)
- 35類:広告業、卸(指定役務:広告代理店、スーパーマーケットなど)
- 36類:金融(指定役務:銀行業務、保険サービスなど)
- 37類:建設(指定役務:建設工事、修理サービスなど)
- 38類:電気通信(指定役務:テレビ放送、インターネット回線会社など)
- 39類:物流、旅行(指定役務:鉄道会社、旅行会社など)
- 40類:加工業(指定役務:物品の加工、レンタルサービスなど)
- 41類:教育(指定役務:学校教育、セミナー開催など)
- 42類:ソフトウェア(指定役務:アプリ開発、プログラミングなど)
- 43類:飲食、宿泊(指定役務:レストラン、ホテル予約サービスなど)
- 44類:医療(指定役務:美容室、介護サービスなど)
- 45類:サービス(指定役務:冠婚葬祭、警備など)
商標登録の流れ
商標登録は次のような流れで行われます。
- ネーミング、商標調査
- 特許庁への出願
- 審査
ここからはそれぞれの内容について解説していきます。
ネーミング、商標調査
化粧品ブランド名や商品名を決め、商標として登録したいときは同じものや似たようなネーミングが既に商標登録されていないか調査する必要があります。商標調査が不十分なまま商標登録を行うと商標権侵害となる可能性があるため最も重要な段階ともいえるでしょう。
出願
商標と使用したい商品やサービスを指定して特許庁に出願します。出願されるとその内容を公報に掲載する出願公開が行われます。
審査
特許庁によって、商標や使用したい商品やサービスの記載が適切がどうか、既に商標登録されたものでないかなどの審査を行います。審査の結果、登録要件を備えていると判断されれば登録査定となり、登録料納付によって商標登録完了となります。 なお、出願から登録までの特許庁との手続きは弁護士や弁理士に依頼することができるため、代理で行ってもらうと安心です。
商標登録の注意点
商標登録にはいくつかの注意点があります。これらを確認しておかないと、ブランド名や会社名、商品名を適切に守ることができなくなるほか、更なる書類提出が求められる場合があるため気を付けましょう。
商標登録は早めに出願する
商標登録を受けるためには、特許庁に商標登録の出願をする必要があります。 商標登録は、同じ商標であれば先に出願した人に登録が認められるため、なるべく早めに商標登録の出願を済ませておきましょう。 商標登録を出願せずに商標を使用していると、他社が先に同じような商標の登録を出願していた場合は商標権の侵害にあたる可能性があるため注意が必要です。
商標の区分や指定役務が適切なものか確認する
商標登録を出願する際、商標の区分や指定役務がその商品にとって適切なものになっているかしっかり確認する必要があります。 例えば、ボディーソープの区分は3類にあたりますが、医療用ボディーソープの区分は5類にあたります。せっかく医療用ボディーソープを販売しようとしているにもかかわらず3類のボディーソープの区分のみ商標登録の出願をしてしまうと、本来守りたい商品の権利を守ることが出来ていないことになってしまうのです。
指定役務の設定数に注意
商標登録の際、同一の区分であれば指定役務をいくつ設定しても費用は変わりません。しかし、指定役務の設定数を多くしすぎないように気を付けましょう。 指定役務を22個以上設定されていると、その商標を本当に使用する意思があるのか確認処理が行われます。確認処理の際には、使用する意思を証明するための書類(使用証明)の提出が求めれるため注意が必要です。
まとめ
会社名やブランド名、商品名を守ることができるのが商標登録です。化粧品のネーミングは似たものが多くなってしまうため、商標登録は化粧品ブランド設立にとって必須といわれています。 商標登録は登録から10年間有効となり、更新を繰り返せば半永久的に維持していくことが可能です。化粧品ブランドの設立を考えている人は、商標登録を正しく出願して他社との商標トラブルを防ぐことを忘れないようにしましょう。