化粧品の製造では、製造工程の区切りごとに製品の品質をチェックする必要があります。
これを中間試験と呼びます。
中間試験で何をチェックするのか、どのように記録を取るかなど、初めてではわからないことも多いですよね。
この記事では、GMP管理ではない化粧品の中間試験について解説します。
化粧品OEMの中間製品試験とは
中間製品試験とは、中間製品の段階でおこなう検査や試験のことを指します。
略して中間試験、さらに略して中試ということもあります。
最終製品までOEM製造の場合、委託先の工場で実施されることがほとんどです。
化粧品そのものはOEM契約で製造し、自社でパッケージへのラベル貼りをしたり、包装をしたりする場合は、中間製品試験をおこなう必要が出てきます。
中間製品とは
中間製品とは、製造の中間工程にある製品のことです。
充填前の化粧品の中身(バルク又は中間バルクといいます)や、ボトルやジャーなどの容器に中身を充填してフタをした段階のものを指します。
この後の工程は、容器への表示ラベルを貼ったり、容器をブリスターケースや化粧箱に入れたり、輸送に向けた単位箱に入れたり、最終製品試験をおこなったりといった流通可能な状態に完成させるものになります。
中間試験の試験検体
中間試験をおこなうためには、製造した製品の中から試験用の検体を抜き取ります。
通常は1つのバッチで複数の検体で試験します。
製造を開始した直後の製品(初物)、ちょうど真ん中あたりの製品(中物)、製造の終了間近の製品(終物)と、1バッチの中からバランス良くサンプリングするのが一般的です。
中間製品試験のために抜き取りした製品を、中間製品試験品や中間試験品、中試品などと呼びます。
原則として、中間製品試験で合格判定を得られたら、次の工程に入ります。
合格判定を待たずに次工程をすすめていても、不合格判定が出たら作業を中止します。
中間製品に対して、最終工程まで製造が終了した製品を最終製品と呼びます。
試験の頻度
中間製品も最終製品も、必ず製造したすべてのバッチで試験を行います。
同じ製品を連続してつくっていても、バッチが変わったらそのたびに製品を抜き取って試験をします。
最初のバッチと終わりのバッチだけ試験するということはできません。
中間試験の内容
中間製品試験では、中間製品の品質が、あらかじめ設定した基準を満たしているかを確認します。
試験検査(試験検査項目、規格、サンプル数等)については、あらかじめ製品規格として必要な基準を定めておきます。
確認の方法は、分析試験や官能試験が中心で、必要があれば安定性試験がおこなわれます。
分析試験
成分が設計どおりに配合されているか、異物や微生物が混入していないか、製品の外観に問題がないかなどを確認する試験です。
試験項目は以下のものがあります。
- 外観試験(容器包装など)
製品の外観に異常がないか、容器の変形や破損・キズなどを確認します。
- 理化学試験
性状、pH、粘度、比重、有効成分の濃度、配合禁止(制限)成分の濃度などを確認します。
数値が出るものは数値を記録します。
- 微生物試験
微生物(細菌や真菌)が混入していると腐敗の原因になるため、試験を実施して混入の有無を試験します。
官能評価
官能評価とは、人の感覚でどのように感じるか試験することです。
主に五感(視覚・聴覚・ 味覚・嗅覚・触覚など)を用いて製品の品質を評価・判定します。官能検査、官能評価試験ともいいます。
基準品と比較した評価をすることが一般的で、中間試験品が基準品に対し忠実にできているかを確認することが大きな目的です。
例えばクリームなら、指に取った時のクリームのかたさや粘度、最初に肌にのせた時のみずみずしさ、肌への伸ばしやすさ、べたつきなどを複数の試験者で評価します。
安定性試験
その化粧品を使い終わるまで品質が劣化しないように保持できるかどうか確認する試験です。
安定性試験によって、製品の物理的、微生物的および化学的品質の変化を確認することができます。
一般的には一定温度での等温安定性試験が用いられます。
ほかにも、日光照射試験、対光性試験、輸送試験、振動試験、落下試験、ワイパー試験、携帯試験などがあります。
試験記録
化粧品の製造には、
- 製造記録
- 試験記録
- 出荷記録
- その他製造所の管理記録
の4つがあります。
このうち中間試験に関わる記録は2.と4.です。
試験記録
責任技術者は、化粧品等を製造するごとに試験検査を実施し、その記録を作成します。
記録書には以下の記載が必要です。
- サンプル名:製品名や中間製品であることを明記
- バッチ番号(製造番号)や管理番号
- 試験検査項目
- 試験検査日
- 試験検査の担当者氏名
- 試験検査結果と判定基準
- 試験検査の結果の判定内容・判定日・判定者氏名
- 使用した機器の種類や管理番号など
試験記録には生データも含まれます。必ず保管しましょう。
その他製造所の管理記録
試験に使用する機器の点検記録を作成します。
試験をおこなう前には、必ず試験機器の使用前点検を実施し、正確な試験結果が得られるように確認します。
また、定期的に校正をして、測定値が正しいことを証明します。
記録の保存期間
試験の記録はそのバッチの製造記録などとまとめて保管されるものです。
製造記録・試験記録・その他製造所の管理に関する記録を作成し、3年間(または、有効期間+1年のうち長い期間)保管することが求められています。
中間製品の保管
中間製品の保管には定められたルールがあります。
守っていないと行政から指導を受けたり、製造業許可を取り消されたりしますので、必ず守りましょう。
化粧品の製造や保管は、許可申請時に一覧で提出した設備以外は使うことができません。
倉庫が満杯だからといって、勝手に製造場所の一部や外部倉庫に製品を保管すると、違反になります。
変更申請して保管設備を追加・変更することができるので、必要ならば変更申請を出しましょう。
製品が変質しないように、倉庫は環境が一定になるように管理します。
また、定期的に温度や湿度のチェックと記録を行い、管理記録を残します。
中間製品と最終製品と原料・材料はすべて別々に保管します。
種類別・製造記号別に保管し、倉庫を分けるか区画分けをして専用エリアにするなど、製品の取り違えが起こらないようにしましょう。
保管設備に保管できるのは、中間製品と最終製品と原料・材料のみです。
会社の事務用品や、製造に使うマスクや手袋などの備品を製品用の倉庫に置くことはできません。
必ず別の倉庫に保管します。
ラベルの版の取り違えは、回収になる場合もある重大な欠陥になってしまいます。
切り替えとなるバッチのときには特に注意し、旧版の製造が終了したら旧ラベルは速やかに廃棄しましょう。
まとめ
中間製品試験は、化粧品製造では必ず実施する試験です。
OEM製造の場合は委託したOEM会社によっておこなわれますが、任せっぱなしにしないで、自社でも試験内容や試験結果を把握しておきましょう。
この記事を参考にして、良い化粧品を作ってください。