化粧品OEMで石鹸を作る方法には、「枠練り」と「機械練り」があります。
どちらにも長所と短所があり、どちらが自社のブランドに適しているのか悩みますよね。
この記事では、石鹸の製造の2つの方法と、製品にどのような違いがあるのかを解説します。
枠練りと機械練りの鹸化法の違い
石鹸は鹸化(けんか)法といって、天然油脂に水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を混ぜることで作られます。
こうして作られたものを石けん素地といいます。
この鹸化には3種類の方法があり、
- 枠練り:コールドプロセス
- 機械練り:ホットプロセス、中和法
が使われます。
ホットプロセス
ホットプロセスは90℃で材料を加温しながら混ぜ合わせることで、基本的に機械でおこないます。
高温で反応させるため化学反応が促進され、短時間で作れることが特徴です。
美容成分は熱で劣化しやすくなるため、オイルなどの熱に弱い成分は配合できません。
材料を混ぜ合わせる過程で天然の保湿成分であるグリセリンが生じます。
不純物やグリセリンを残したままの場合「釜炊きけん化法」といいます。
メリットはグリセリンで保湿効果が得られることです。
デメリットはもろく溶けやすい石鹸になるため、保管状況によっては溶けてしまうことです。
不純物やグリセリンを除去する場合は「けん化塩析法」といわれます。
メリットは長持ちさせやすいことで、製品が溶けにくく安定します。
コールドプロセス
コールドプロセスは化学反応の熱だけで混ぜ合わせる方法です。
40℃前後の低温で鹸化をじっくりすすめるため、外気温や湿度など外的要因で品質が左右されやすいです。
基本的にハンドメイドでつくられ、熱に弱い繊細で高品質の美容成分でも配合できます。
デメリットは時間がかかることと、安定したけん化をするには職人の技術と経験が必要なことです。
中和法
中和法は、あらかじめ加熱処理や薬品処理で天然油脂を脂肪酸とグリセリン(天然保湿成分)に分けておき、脂肪酸に苛性ソーダを加えて作ります。
グリセリンや不純物は含まれず「純石鹸」と呼ばれます。
枠練り石鹸について
枠練り石鹸は、仕上げの段階(=固化)させるときに枠に詰めて冷やすことが名前の由来です。
特徴
石鹸素地と美容成分を混ぜた液体を、ひとつの大きな枠に流し込んで冷やし固めて切り出し、乾燥させて作ります。
機械練りと比べて時間も場所も必要なため、高価になるのが特徴です。
乾燥には7日~70日かけ、時には2年以上熟成させます。
時間をかけて冷やして固めるので、保湿成分・美容成分が残りしっとりとした使い心地で、年齢肌や乾燥肌の方におすすめの石鹸です。
作り方
コールドプロセスで作られた石鹸素地と美容成分が混ざった液体を、ひとつの大きな枠に流し込んで冷やし固めて切り出します。
さらに小切りにしたり、成型したりして販売する状態の石鹸にします。
それをコンテナに並べて乾燥させます。
JIS規格により枠練りの化粧石けんの水分量は、28%以下に指定されているため、十分に乾燥させます。
2ヶ月以上乾燥させたものは強アルカリ成分が抜けて、かたくて溶けにくい石鹸になります。
枠練り石鹸のメリット
枠練りで石鹸を作るメリットは、美容成分を50%以上配合可能なことです。
石鹸素地を40〜70%、残りの30〜60%を保湿・美容成分にできるため、多くの美容成分が入れられます。
コールドプロセスで作られるため、熱を加えると壊れてしまうような独自の美容成分を入れられるメリットがあります。
製品の30%以上に美容成分や保湿成分を配合できるので、成分の種類や処方にも独自の工夫を加えることができ、オリジナリティーが出せます。
保湿成分をたっぷり配合できるので、肌に優しい石鹸ができます。
洗浄力もマイルドなものが多くなるので、皮脂が奪われすぎるのを防ぐことも可能です。
しっかり乾燥させた枠練り石鹸は、泡立てるときに少しコツがいるものの、きめ細やかな泡立ちになります。
そのため洗い心地のよさをアピールできることがメリットです。
枠練り石鹸のデメリット
枠練り石鹸は手作りで時間もかかるため、コストが高くなります。
消費者が納得する値段と品質のバランスが必要で、付加価値をどのようにアピールするか、販売戦略が必要です。
機械練りに比べて水分量が多く、溶けやすいことがあげられます。
十分に固くなるまで乾燥時間をかけられない場合は、湿気や高温をさけて保管してもらうようにユーザーに使い方を説明するなど工夫しましょう。
美容成分が多くなる分、洗浄力は弱くなります。
スッキリした洗い心地を求めるユーザーや、オイリー肌の方には不向きになることが多いです。
機械練りの石鹸について
鹸化から成型までの製造工程を機械でおこなう石鹸は、機械練りとよばれます。
特徴
機械練りの石鹸はすべての工程を機械でおこなうため、安価で大量生産向きになります。
美容成分は少なく、洗浄成分が中心で、原料の98%は石けん素地、2%が美容成分です。
洗浄力が高いため、オイリー肌やニキビ肌におすすめの石鹸になります。
意外ですが、余計な成分が入っていないからシンプルに洗浄だけができるため、敏感肌やアレルギーの方におすすめできます。
特に純石鹸は、肌荒れの原因となる不純物や成分を極力排除できることから、余計な成分が入っていないものを求めるユーザーに好まれます。
作り方
石けん素地はホットプロセスまたは中和法で作られます。
作られた石けん素地は、専用の機械で混合・練成しやすいチップ状、またはペレット状に細断し、乾燥させます。
機械練りの化粧石けんの水分量は、16%以下とJIS規格で決まっているため、枠練りよりもしっかり乾燥させます。
乾燥した石けん素地に、機能性成分・香料・色素・保湿剤などを加え、全体にまんべんなく行き渡るように混合します。
練られた石けん素地を加温・圧縮し、押出機で押し出したあと、カットと成型をおこない完成です。
機械練りのメリット
98%が洗浄成分ですので、簡単に泡立てられるのがメリットです。
また、洗浄力も高くスッキリとした洗い心地になります。
純石鹸はグリセリンや鹸化の段階で発生する不純物が取り除かれているため、無添加の石鹸にすることができます。
すべて機械で作り、材料は均一に混ぜられ加温・圧縮されるので、成分がきれいに混ざった均質な石鹸ができます。
鹸化や乾燥、成型までを機械で行ない、短時間で安定して量産ができるため、安価になります。
機械練りのデメリット
鹸化の工程でできたグリセリンを除去しない場合は、水に溶けやすくなります。
保管は水切りのついたケースに入れるようにするなど、ユーザーに注意を促す必要があります。
全体の2%しか美容成分を添加できないため、入れられる成分や処方が限られます。
処方に工夫がこらせないので、特徴のある製品を打ち出すのは難しくなります。
ほかのブランドとの差別化しづらいのが、機械練りのデメリットです。
まとめ
石鹸の製造には「枠練り」と「機械練り」の2種類がありますが、どちらにもメリットとデメリットが存在します。
自社ブランドのユーザーへの訴求にはどちらの製法が向いているか、よく検討しましょう。
この記事を参考にして、素敵な石鹸を作ってください。