化粧品は「水」と「油」と「界面活性剤」でできています。
その一つの界面活性剤は化粧品には欠かせない原料ですが、どのような成分かわからない方も多いと思います。
そこでこの記事では、化粧品に使われる界面活性剤について解説します。
界面活性剤とは
界面活性剤は、水と空気の境目や、水と固体の境目、水と油の境目に吸着することで、境目(界面)の性質を変化させる物質の総称です。
界面活性剤の性質
界面活性剤はひとつの分子の中に「水になじむ部分(親水基)」と「油になじむ部分(疎水基)」の両方をもっています。
この構造が、例えば水と油といった性質の違う2つの境目(界面)へ吸着し、界面の性質が変化します。
その結果、以下のことがおこります。
水に溶けた界面活性剤分子は、親水基を水側、疎水基を空気側に向けて、水の表面にくっついて水の表面張力を低下させます。
表面張力が小さくなると、乳化や分散、起泡(泡の発生)が起こりやすくなります。
水中の界面活性剤の濃度が高くなると、水から逃れようとする界面活性剤分子がおおくなり、お互いに集まって親水基を水側に向けた球体(ミセル)をつくっていきます。
ミセルができると、水に溶けない油を水の中に添加した場合、その油をミセルの中に取り込んで、外見では油が水に溶け込んだように見えます。
これを可溶化といいます。
逆に油中では、疎水基を油側に向けた球体(逆ミセル)をつくって水をミセルの中に取り込んで、油と水が混ざったような状態になります。
界面活性剤の機能
この界面活性剤の性質は、化粧品に3つの機能を与えます。
1. 洗浄する、泡立ちを良くする
2. 水と油を混ぜる(乳化)、溶液の中に均等に固形物を混ぜる(分散)
3. 化粧品の浸透を良くする、肌なじみのいいテクスチャーにする
化粧品原料に使われる界面活性剤のタイプ
界面活性剤は、水に溶けたときに電離してプラスもしくはマイナスのイオンになるものと、電離しないものに別れ、それぞれ性質が異なります。
アニオン界面活性剤
水に溶けたときに、疎水基のついている部分がマイナスイオンに電離する界面活性剤です。
古くから石けん成分として使われてきました。
アニオン界面活性剤は、その洗浄力の高さを生かしてシャンプー、ボディソープ、洗顔料などに使われます。
近年では、低刺激・敏感肌向けのアミノ酸系などの界面活性剤が開発され人気になっています。
特徴
- 洗浄作用が高く、クリーミーな泡立ち
- 乳化・分散性に優れる
- 温度の影響を受けにくい
成分
ラウレス硫酸Na、ステアリン酸K、ココイルグルタミン酸TEAなど
カチオン界面活性剤
水に溶けたときに、疎水基のついている部分がプラスイオンに電離する界面活性剤です。
石けんとイオン的に逆の構造をもっているため、「逆性石けん」と呼ばれることもあります。 繊維や毛髪などのマイナス(負)に帯電している固体表面に強く吸着し、柔軟性、帯電防止性、殺菌性などを付与することができます。
化粧品に使用されるカチオン界面活性剤は、アミン塩型と第四級アンモニウム塩型があります。
コンディショナーやトリートメントによく使われ、指通りをよくし、髪をやわらかにする効果があります。
殺菌や消毒効果の高い石けんに配合されることの多い界面活性剤です。
殺菌作用が高いベンザルコニウムクロリドは、医薬部外品の制汗剤やフットケアによく使用されます。
特徴
- 繊維などへ吸着する
- 帯電防止効果
- 殺菌作用
成分
ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアルトリモニウムコロリド、セトリモニウムブロミドなど
両性界面活性剤
水に溶けたときに、アルカリ性領域ではアニオン界面活性剤の性質を、酸性領域ではカチオン界面活性剤の性質を示す界面活性剤です。
皮膚に対して刺激が少なく作用が穏やかなので、低刺激で乾燥肌や敏感肌向きの洗顔料などに配合されます。
また、リンスインシャンプーやトリートメント効果のあるシャンプーにも使用されます。
乳化を長持ちさせる効果があるので、保湿効果の高い乳液、クリーム、美容液にも加えられます。
特徴
- 水への溶解性に優れる
- 他の活性剤と相乗効果
- 泡立ちを助ける、乳化を長持ちさせる作用
- 常温では液状のワックス(ロウ)で酸化しにくい
成分
ココアンホ酢酸Na、ラウリルベタイン、コカミドプロピルベタインなど
ノニオン(非イオン)界面活性剤
水に溶けたときに、イオン化しない親水基をもっている界面活性剤です。
水の硬度や電解質の影響を受けにくく、ほかの全ての界面活性剤と併用できます。
この使いやすさと浸透性、乳化・分散性、洗浄性などの性能面での優れた特徴が認められ、需要が増えている界面活性剤です。
シリコーン系や油によく溶けるタイプ、水になじみやすいなどバリエーション豊富なことも特徴で、親水性と疎水性のバランスを容易に調整できます。
非イオン界面活性剤の使用量の伸びは大きく、アニオン界面活性剤とならんで主力の界面活性剤となっています。
乳化・可溶化剤・分散剤と使用用途も多岐にわたり、日焼け止めやリキッドファンデーション、ウォータープルーフタイプの化粧品、ウォータータイプのクレンジングジェルなどに使用されます。
特徴
- 乳化・可溶化力に優れる
- 泡立ち控えめでマイルドな洗浄力
- 温度の影響を受けやすい
成分
ステアリン酸PEG-25、パルミチン酸スクロース、コカミドDEA、ラウリルグルコシドなど
界面活性剤の種類
化粧品で使用される界面活性剤には、天然のものから化学合成品まで多くのものがあります。
天然物
天然に存在する界面活性剤です。化学合成品不使用の化粧品で使われ、そのまま又は精製して配合します。
- レシチン:卵由来
- カゼイン:牛乳由来
- サポニン:植物由来
などがあります。
石鹸系
石鹸系の界面活性剤は、天然油脂に水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を混ぜることで作られます。
比較的強いアルカリ性の界面活性剤で、乾燥肌や敏感肌、アトピーなどには洗浄力が強すぎることがあります。
ラウリン酸Naが有名です。
脂肪酸エステル系
化粧品によく使われている界面活性剤です。
石けんで使用される脂肪酸とグリセリンを反応させて作ったり、脂肪酸とショ糖を反応させて作るものなどがあります。
ショ糖脂肪酸エステル、ラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロースなどがあります。
アミノ酸系
アミノ酸系は全般的に低刺激で、皮膚や毛髪を保護する機能があります。
ベビーシャンプーやほかの界面活性剤の刺激緩和剤としても配合されます。
アミノ酸系界面活性剤は、石けんよりも製造工程が長く生産量が少なくなりがちのため、比較的高価な成分です。
N-アシルーL-グルタミン酸ナトリウム(表示名:ココイルグルタミンン酸Naなど)やラウロイルメチルアラニンNaなどがあります。
高級アルコール系
高級アルコールは、炭素数の多い脂肪族アルコールのことで、通常炭素数12以上のものをいいます。
脂肪酸から作る方法・石油から合成する方法とあります。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(表示名:ラウレス硫酸Naなど)は、シャンプーの主剤として使われることが多い界面活性剤です。
石油系
石油を原料として製造された界面活性剤です。
洗浄力が強く、価格面で高級アルコールより有利なので、低コストコスメに向きます。
スルホン酸Na、ラウリル硫酸Naなど
まとめ
界面活性剤は化粧品には欠かせない成分です。
種類も性質もたくさんあって新成分もでてくるため、処方に取り入れるためにはプロに相談するのが一番です。
この記事を参考にして、素敵な化粧品を作ってください。