ここ数年の間に物流倉庫では、需要の増加に対して、働く人手が不足しているという状況が発生しています。近年、日本では少子高齢化社会が進行しており、物流倉庫業界だけに限らず、多くの業界・業種で人手が不足しているというのが課題に挙げられています。この記事では、倉庫業務が人手不足に陥る理由や人手不足対策、ITを利用した人手不足の解消事例について紹介していきます。
物流倉庫が人手不足になる4つの理由
物流倉庫が人手不足に陥っている原因は、次の4つが挙げられます。
- 仕事の割に給料が低い
- 少子高齢化による労働力不足
- 働き方改革の影響
- 新型コロナウイルスの影響
仕事の割に給料が低い
給料が低い傾向にある業界は、人手不足に悩まされるという傾向にあります。給料が低くても働く人がやりがいを感じられるような職種には、人が集まる傾向もあります。物流倉庫では、輸送業務に従事する人の数がほとんどです。そのため、力仕事が必要なこともあって、男性しかできないというようなイメージを持っている業界でもあります。年齢とともに、力仕事をするのもキツくなってくるので、20歳代から30歳代の若い世代については現場で輸送、40歳代より上の年代については物流の管理業務というような傾向が多いでしょう。
実際に、肉体労働をしている20歳代から30歳代前半にかけての若年層は、40歳代より上の年代については物流の管理業務をしている人よりも収入は高くないため早期退職しまうことも多いようです。
少子高齢化による労働力不足
単純に若年層の人数が減っていることによって、働き手の母数が少なくなっているから労働力が不足しているというのが理由です。このような状況から今までと同じ対象のみをターゲットとしても母数がいないので、人的リソースの問題を解消することはできません。これまで男性がメインだったという業種であっても、力仕事が必要のない業務であれば女性を採用したり、既に定年退職されたシニア世代の方も積極的に採用をしていく必要があります。外国人の雇用も進んでいるので、外国人の雇用も視野にいれることでも解決できるでしょう。
働き方改革の影響
物流倉庫業界は基本的に休みが取れないことがほとんどです。荷物も次から次へと運ばれてくるため、他の業界と比べても、稼働時間が増えてしまいます。1人あたりの残業をさせないようにしようとなると働く人が必要になります。しかし、現状人手不足が慢性化しているので、一人あたりの労働時間が増加傾向にあります。このような状況に陥ると休憩が取れない状態となってしまい、ブラック企業ということを言われてしまいます。
仕事は増えるけど、人がいないから残業するしかない。この負の連鎖をどのようにして解消するかというのが課題でもあります。実際に荷物を輸送すると人間の手が必要になります。しかし、他の部分でAIなどのIT技術で効率化できる部分があれば、積極的に導入することで、人でしかやれない仕事に注力することができるようになります。
新型コロナウイルスの影響
コロナの影響で、巣ごもり需要という言葉ができたように、家にいながら何かをするという文化が日本にも定着しました。その結果、EC市場は20%以上も成長を遂げ、アマゾンなどの通販業界は、特に特別なマーケティングを実施したわけでもないのに、売上が伸びました。通販業界が拡大すると、それに比例し物流倉庫業界にも仕事が増えるので需要が増えます。需要増加に伴い、さらに残業時間が増え労働環境が悪化します。
物流倉庫業務の人的リソース不足を解消する対策
これまで、社会的背景などによって人手不足の原因について紹介しました。目の前にある課題をどのように解決すれば良いか思考することを今の物流倉庫業界に求められています。ここからは、物流倉庫業界の人的リソース不足を解決するための具体的な対策について2つ紹介していきます。
女性やシニア世代でも働ける環境を整備する
先程も少しお伝えさせていただきましたが、物流倉庫の仕事を細分化しましょう。そうすることで、力仕事が必要な業務、不要な業務とに大きく分けることができます。力仕事が不要な業務であれば、女性やシニア世代でも十分戦力になるでしょう。また、日中の忙しい時間帯には、主婦の方を雇用したりすることで、一人あたりの労働時間を短縮することも可能です。主婦の方は、「子どもを預けている日中の短時間だけ働きたい」というニーズもあり、そちらのニーズを汲み取ることで、会社と労働者のお互いにメリットがあるでしょう。
管理システムによる従業員管理の効率化
物流倉庫業務の従業員管理を効率化するには、従業員の労働時間をキチンと管理し、無駄のないシフトを組むことが求められます。シフトの組み合わせを、社長やリーダーの勘などではなく、予測される仕事量などを基準に判断するため、従業員管理にITシステムを導入することで、社長やリーダーがシフトを組むときに考える時間を削減できるだけではなく、ITシステムのAIによって、より無駄のないシフトを組めるようになるのが期待できます。そのことにより、必要最低限での従業員で稼働ができ、現在の従業員の数で、どうしようかとするための、人手不足を解消する1つの選択肢です。
物流倉庫業務の自動化(IT化)
物流倉庫業務そのものを自動化(IT化)して、物理的にどうしようもない人手不足を解決する方法もあります。IT技術により、自動化できることは機械に任せて、人間でしかできないことにフォーカスすることで、従業員一人ひとりの負担を下げることができます。それと同時に、今までの仕事を効率よくすすめることもできるようになるでしょう。物流倉庫業務の自動化による、具体的な施策を紹介していきます。
無人搬送ロボット
搬送作業を機械(ロボット)に任せるこの方法は、特に人手が不足している企業への対策として有効です。無人搬送ロボットの主な仕事は、倉庫内のピッキング作業です。これまでの方法は、従業員が倉庫内にある商品をピッキングしていました。御存知の通り、ピッキング作業の負荷というのは大きいため、人員を割くことがなかなかできないでいた業務でもあります。しかし、無人搬送ロボットを導入することで、負担の大きいピッキング作業を代行してもらえるので、従業員の負担を大幅に軽減することができます。
商品保管の棚入れ作業の自動化
ピッキング作業だけではなく、商品を入荷しやときの棚入れ作業もロボットに任せることで人手不足の解消ができます。従業員は、ピッキングと棚入れの、2つの力仕事から解放されるため、管理する人数をきめれば、他の人間でしかできない物流の仕事に人員を配置できるようになるでしょう。
入出庫時の検品を自動化
現在、ユニクロなどの、アパレル業界で導入が進んでいる技術です。「RFID」と、一括でRFIDのデータを読み取る通過ゲートタイプの装置を配置することにより、入出庫時の検品を自動化します。RFIDとは、 ID情報が入っているRFタグと呼ばれるものに、電波などを使って情報の読み書きを行うシステムのこと
特に細かい商品の分類が必要な検品作業の場合、入出庫時の検品で人為的なミスが多く発生していました。RFIDの情報を、一気に正確に読み取れるようなIT技術が導入できれば、入出庫時の作業の手間も省けますし、なにより人間がやったことによるミスも防げるようになります。
倉庫管理システムの活用
搬送作業におけるロボットや通過ゲートタイプのRFID自動読み取り装置の導入は、実際に導入できればかなりの効率化が見込めます。しかし、非常に導入コストが高いので、資金的な問題で導入できない企業がほとんどだと思います。そこで、これまで紹介した施策よりも、比較的コストを抑えながら、IT化ができる選択肢の1つとして、倉庫管理システムの導入というのがあります。
この倉庫管理システムは、シンプルに言えば倉庫内に保管している物品の情報を一元管理するシステムのことです。このシステムでは、倉庫内にある商品の配置を整理することで、入出庫時の移動距離を短縮します。そのことにより、倉庫内における移動などの作業を効率化することができます。倉庫業務を自動化(IT化)することで、これまで負担の大きかった業務も人数を削減しながら、効率よく進めることができるようになります。
まとめ
新型コロナウイルスの影響や少子高齢化の影響によって、日本国内の物流に関わる物流業界の深刻な人手不足の状況が続いています。しかし、自社の今の課題を企業ごとに正確に把握することで、具体的にどのような施策を取れば良いのか判断することができます。この機会に、人手不足解消のためにIT化の導入を検討するのはいかがでしょうか。