化粧品のコンセプトが定まり、サンプル検討を経て中身(バルク)が決まると、続いては商品の仕様についても検討を進める必要があります。 中でも化粧品の裏面については様々なルールがあるため特に注意を払う必要があります。
それでは、化粧品の裏面に関してはどの様なルールがあるのでしょうか。 今回は化粧品の裏面表示についてご説明したいと思います。
化粧品の裏面表示とは
それではまず化粧品の裏面表示にはどの様な内容が含まれているのでしょうか。 化粧品の裏面表示には、法定表示と言われる法で定められた表示が義務付けられています。 ここでは化粧品の裏面における法定表示について細かくご説明したいと思います。
法定表示について
法定表示とは法で定められた化粧品の容器や直接のパッケージに直接記載しなければならない表示を指します。 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「医薬品医療機器等法(薬機法)」においては以下の様に記されています。
化粧品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
一 製造販売業者の氏名又は名称及び住所
二 名称
三 製造番号又は製造記号
四 厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品にあつては、その成分の名称
五 厚生労働大臣の指定する化粧品にあつては、その使用の期限
六 第四十二条第二項の規定によりその基準が定められた化粧品にあつては、その基準において直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項
七 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
また、上記の内容を基に、化粧品公正取引協議会により「化粧品の表示に関する公正競争規約」が設定され、化粧品の法定表示について以下の内容が設定されました。
第4条 事業者は、化粧品の直接の容器又は直接の被包(直接の容器又は直接の被包に表示された事項が、外部の容器又は外部の被包を透かして容易に見ることができない場合は、当該外部の容器又は外部の被包を含む。)に次に掲げる事項を化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則(以下「施行規則」という。)に定めるところにより、邦文で外部から見やすい場所に、明りょうに表示しなければならない。ただし、施行規則で特に定める場合においては、この限りでない。
(1) 種類別名称
(2) 販売名
(3) 製造販売業者の氏名及び名称及び住所
(4) 内容量
(5) 製造番号又は製造記号
(6) 厚生労働大臣が定める化粧品については、その使用の期限
(7) 厚生労働大臣の指定する成分
(8) 原産国名
(9) 公正競争規約施行規則で定める化粧品については、その使用上又は保管上の注意
(10) 問い合わせ先
化粧品を販売する上で、上記の10項目は商品の裏面などに必ず記載しなければなりません。 続いては、10項目それぞれの内容についてご説明していきたいと思います。
(1) 種類別名称
一般消費者が商品を選択するための基準となる名称であり、その化粧品がどの様な商品か(商品の本質)を表現するものです。 種類別名称は基本的に「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則 別表1」に記載されている名称を用いる必要があります。
参考:化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則 別表1【種類別名称】
(2) 販売名
化粧品の製造販売元が、都道府県知事に届出を行う「化粧品製造販売届書」に記載された名称のことで、その商品の法律上の名前とも言えます。 また、販売名については事業者側で決めることができますが、日本化粧品工業連合会(粧工連)が定めるガイドラインでは以下の様に記されているため、販売名を決める際は注意が必要です。
F1.2 販売名の略称又は愛称として使用できない名称
名称(販売名)に使用できないものは略称又は愛称にも使用できないことになっているの で、下記に注意すること。
〔化粧品の場合〕
① 既存の医薬品及び医薬部外品と同一の名称は用いないこと。
② 虚偽・誇大な名称あるいは誤解を招くおそれのある名称は用いないこと。
③ 配合されている成分のうち、特定の成分名称を名称に用いないこと。
④ ローマ字のみの名称は用いないこと。
⑤ アルファベット、数字、記号等はできるだけ少なくすること。
⑥ 剤型と異なる名称を用いないこと。
⑦ 他社が商標権を有することが明白な名称を用いないこと。
⑧ 化粧品の表示に関する公正競争規約に抵触するものを用いないこと。
⑨ 医薬品又は医薬部外品とまぎらわしい名称を用いないこと(例えば、○○薬、薬 用○○、漢方○○、メディカル○○、○○剤、アトピー○○、ニキビ○○、アレ ルギー○○、パックで「○○ハップ」等)。
(3) 製造販売業者の氏名及び名称及び住所
製造販売元が化粧品OEMの場合、化粧品OEMの会社名、住所を記載する必要があります。
(4) 内容量
文字通り化粧品のバルクの容量です。化粧品のバルクの粘度に応じて「ml (ミリリットル)」や「g (グラム)」の表示を行います。
(5) 製造番号又は製造記号
ロット番号とも呼ばれ、その商品の製造情報が情報が紐付けられています。 製造番号の印字は製造の段階で行われ、その商品がいつ製造されたかだけでなく、どの原料を使って製造され、いつ充填されたかまで細かく遡ることができます。
(6) 厚生労働省が定める化粧品については、その使用の期限
商品の安定性が担保できない化粧品においては、使用期限を表示する必要があります。 しかし、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「医薬品医療機器等法(薬機法)」においては、製造後3年以内で変質する化粧品を除き、使用期限を表示する必要はないとされています。
(7) 厚生労働大臣の指定する成分
その化粧品に配合されている全成分を表示する必要があります。また、化粧品の全成分表示についても決まりがあるため、下記について留意して表示を行う必要があります。
(1) 成分の名称は、邦文名で記載し、日本化粧品工業連合会作成の「化粧品の成分表示名称リスト」等を利用することにより、消費者における混乱を防ぐよう留意すること。
(2) 成分名の記載順序は、製品における分量の多い順に記載する。ただし、1%以下の成分及び着色剤については互いに順不同に記載して差し支えない。
(3) 配合されている成分に付随する成分(不純物を含む。)で製品中にはその効果が発揮されるより少ない量しか含まれないもの(いわゆるキャリーオーバー成分)については、表示の必要はない。
(4) 混合原料(いわゆるプレミックス)については、混合されている成分毎に記載すること。
(5) 抽出物は、抽出された物質と抽出溶媒又は希釈溶媒を分けて記載すること。ただし、最終製品に溶媒等が残存しない場合はこの限りでない。
(6) 香料を着香剤として使用する場合の成分名は、「香料」と記載して差し支えないこと。
(8) 原産国名
その商品が製造された国を表示します。ただし、製造する上で工程が二国以上で行われる場合や表示方法などには以下のルールがあるため、表示の際はあらかじめ注意が必要となります。
第2 施行規則第8条関係
1.「原産国」の判定は、製品がその構成部分を含め一国のみで製造された場合はその国を原産国とし、製品の製造に二国以上が関与している場合は、「製品に本質的な性質を与えるために実質的な製造又は加工を行った国」を原産国とする。
2.「原産国」における国名又は地名は、一般消費者が認知、理解できるものに限るものとする。特に英文表示による場合は、日本で通常行われている名称と著しく異なるもの、読み方が難しいものは使用しないものとする。
例○ 一般的略称・略号として適切でないもの・・・「墨国」、「露国」、「比国」、「伊国」、「越国」、「西国」、「連合王国」、「グレートブリテン」等
例○ 英語による表示で、日本で通常使われている名称と著しく異なるもの、読み方が難しいもの・・・「Netherlands」(オランダ)、「HellenicRepublic」(ギリシャ)、「Turkey」(トルコ)等
(9) 公正競争規約施行規則で定める化粧品については、その使用上又は保管上の注意
その商品を使用したり保管したりする上での注意事項を表示します。保管上の注意についてはバルクの剤型により表示内容が異なりますが、使用上の注意については、粧工連が定める自主基準を参考に設定を行う必要があります。
(10) 問い合わせ先
その商品に関する問い合わせを行うための連絡先などを表示します。販売メーカーの「お客様窓口」の電話番号を表示しているケースが一般的です。
化粧品OEMに依頼可能?裏面の作成方法
化粧品の裏面表示の作成については、訴求内容を盛り込んだりデザインにこだわりたいなどの理由から、販売メーカー側で行うこともありますが、ノウハウが無い場合は化粧品OEMに依頼することも可能です。 また、初めての化粧品開発でノウハウが無い場合でも、化粧品OEMが作成した裏面を参考にノウハウを蓄積していくことで、オリジナルデザインの化粧品裏面の作成ができると考えられます。 しかしながら、製造販売元が化粧品OEMであったり、製造販売元は自社だが製造自体は化粧品OEMに依頼しているなどの場合は、販売メーカー側で裏面表示を作成しても、必ず製造販売元の薬事チェックを受けるようにしましょう。
まとめ
今回は化粧品の裏面表示、法廷表示について詳しくご説明させていただきました。 化粧品OEMを利用する際、裏面作成も自社で行ってみたいとお考えの方は、是非この記事を参考にしてみてください。